エッセイ『芸術するのはたいへんだ!?十代のキミへ』より 2013年11月 くもん出版


「心の旅」に出かけよう

俳優にしろ画家にしろピアニストにしろ、およそ芸術を志す人達は…
いや芸術に限らず人は「何を美しいと思ったかでその人の将来は決まる」
と僕は思っています。
それはその人が出会った音楽や彫刻や小説や自然、あるいは生き方かもしれません。

僕は演劇の世界に入って40年近くになりますが、もっといろいろ出会ってみたかった。
もう手遅れかもしれませんが「美しいもの」を求めてまだ旅を続けています。
僕のやっている演劇(アート)の分野は畢竟「心の風景」です。
しかもそれはそのアートに触れたお客様の心の中ではじめて結実するものです。
それは「感動」と呼ばれたりもします。
「心の風景」が貧しいものか、豊なものであるのかそれは個々人によって違いますし、
比較できるものではありません。

他人が「美しい」と思っても、自分の心が動かなければ「美しい」とは言えませんし、
自分に嘘をつくことはできません。
なるべく若いうちに出会って下さい。
探して下さい。
あなただけの「美しいもの」がきっとあるはずです。
そうだ!ポケットに文庫本一冊つっこんで「心の旅」に出かけてみようか?

俳優・京楽座主宰 中西和久