「テアトロ」 2006年5月号 掲載
小さなラッキー

「禍福はあざなえる縄のごとし」とか…でも縄のようにキッチリ「禍と福」が順番に廻ってくるものではないようです。
どちらかというと禍禍禍禍禍…笑っている場合じゃないのですが。
「ラッキー!」というのはめったにないからラッキーなのでしょう。ですから人生にあまり期待しないようにしています。期待していると疲れます。
このごろは私、悟りました。毎日小さなラッキーを見つけることにしました。
お天気とか、ご飯の出来とか、電車の空き具合とか、旅先での夕景色とか…先日、夜中に部屋のカギをなくしました。いえ、こんなことはしょっちゅうです。
寒い玄関先でいくらズボンに手を突っ込んでも「ない!」でもひょっとしてと思って、さっき寄った蕎麦屋さんに駆け込みました。
湯気の向こうにニッコリ笑った店主の顔がありました。「これでしょ?」「ラッキー!」

ひょっとしてこうして芝居を続けていられることこそ一番ラッキーなことかもしれない。