部落差別 ハンセン病 いじめ
5分間の「共感」17年
人権をテーマにしたKBC九州朝日ラジオ番組「中西和久ひと日記」が、開始から17年目の今夏、通算放送千回を突破した。部落差別や沖縄の米軍基地、障害者、ハンセン病、いじめなどの人権問題について、舞台俳優中西和久さんがゲストを迎え、ざっくばらんに親しみやすく伝えてきた。全国的にも珍しい、地道に続いてきた長寿の”人権ラジオ”について、中西さんは「人が生きている限り、人権をめぐる問題はどこにでもある。長く続けていきたい。」と話している。
中西さんは福岡県大牟田市出身。俳優小沢昭一さんに師事し、中世の説経節を題材にした「しのだづま考」「をぐり考」などのひとり芝居を続けてきた。
番組は、福岡県人権情報啓発センターがスポンサーとなり、身近な人権問題について広く関心を持ってもらおうと1997年にスタート。7月の同和問題啓発月間を挟み、毎年2〜3カ月間、放送している。月〜金の週5回、午後4時55分からの5分番組だ。今月16日放送回で千回を達成した。
今年は、中山武敏・狭山裁判主任弁護士、小柳浩一・福岡市自閉症協会会長、太田明・菊池恵楓園元入所者自治会長らを迎えてきた。息長く取り上げていつ人権問題のほか、福島の原発事故による避難者への差別やスポーツにおける体罰など、時事的なテーマも取り入れてきた。
番組を担当して3年目の田村貴司ディレクターは「中西さんの話術とラジオならではのフットワークで、どうしても堅苦しくなりがちなテーマをわかりやすく伝えようと取り組んできました」と話す。室井明・県人権情報啓発センター副館長も「ふだん、なかなか考えることのない人権というテーマだからこそ、ラジオという気軽なメディアには力があるはず」と期待する。
中西さんは、常にこんな思いで番組を続けてきた。「人権を侵害され、苦しんでいる人を救うには、共感の声がまわりに必要。そのためにラジオは有効だし、この番組が励みになる人がいると思う。どんな問題を扱っても、正解がこうだ、というのではなく、僕の芝居と一緒で、最後は観客にお任せする。考えるきっかけにしてほしいから」
今年の放送は30日まで。今年10月ごろには、同センターのホームページで過去の番組が聞けるようになる。
(塚崎謙太郎)