毎日新聞 2012年10月13日掲載 |
中西和久 一人芝居「しのだづま考」
「振り出しに戻った気持ちで」
福岡県出身の俳優、中西和久が代表作の「しのだづま考」(ふじだあさや作・演出)を26・27日、福岡市博多区の住吉神社能楽殿で上演する。1000回目の記念公演で中西は「住吉神社の境内は子供の頃よく遊んだ場所。そこでもう一度、振り出しに戻った気持ちでやりたい。」と意気込みを語る。
劇団「芸能座」で修業し、77年に初舞台を踏んだ中西は、86年の自作「火の玉のはなし」から一人芝居で全国行脚を続けている。仏教の教えを物語で説く、宗教と芸能が未分化な形の伝統芸能「説経節」を取り入れた舞台で知られる。
「しのだづま考」は、キツネが人間に化け、自分を助けてくれた男と結ばれるが、素顔を息子に見られて森に帰っていく物語。その息子が平安時代の陰陽師、安倍晴明として活躍する。一人で27役をこなし、三味線もひく舞台は91年度の文化庁芸術祭賞を受賞した。
中西は「呼ばれたら絶対断らずに上演してきたが、1000回は意外と短かった。お客さんには感謝している。海外上演で言葉が通じなくても、観客が分かろうとしてくれた。観客の想像力に任せることも大切と気がついて、楽に演じられるようになった。」とこれまでを振り返る。
(大森顕浩)
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